2019年1月22日火曜日

Behringer MODEL D まとめ




Behringerが作ったMoogのモノマネシンセです。

ベリモーグって呼ばれてます。

はい

もう言い訳出来ないくらい見た目を真似しています。


私は長年MIDI MINIを愛用していまして、こちらもクローンなんですがBehringerのように露骨に見た目が一緒というわけではなくてこちらは控えめです。
オリジナルのMini Moogは鍵盤付きで重くて大きいのですが、私のように鍵盤を叩かない人にとってはMIDI MINIのように4Uラックに収まるサイズというのはありがたくて良かったわけです。


しかしです。

Behringer MODEL Dは軽い!安い!

早い!うまい! あれ?

買ったときはリュックに入れて帰ったのですが、本当に入ってるのかってくらい軽かった。ACアダプターを使っているからだと思います。



ところで最近は新商品でアナログシンセをよく見かるので「なんでもアナログにすればいいってもんじゃないよ」という立ち位置で、これといって注目することもなかった私ですが(Korg以外)。
BehringerについてはDEEPMINDの出来が意外に良かった・・・面白かったという印象があって、Behringer MODEL Dってどうなのかなぁという若干の期待感を持っていたわけです。

そして実際に試奏してみたら驚きました。
さらに値段聞いて驚きました。


最近復活したオリジナルのMinimoog Model Dは40万ほど。
Behringer MODEL Dはその10分の1くらいの値段。

・・・すごいですね。



親切丁寧、日本語の取説(PDF)があります。
https://www.electori-br.jp/products/450.html

USB経由でPCとつなぎ、専用ソフトを使ってアップデや内部の操作変更などが出来ます。
https://www.behringer.com//Categories/Behringer/Keyboards/Synthesizers-and-Samplers/MODEL-D/p/P0CQJ#googtrans(en|en)
こっちは本家、英語サイト。



ソフトの完成度の高さに驚きました。
失礼ながら・・・本当にベリンガーですかこれ?



ソフトもそうなんですが、単純に真似するだけじゃなくて全体的に使いやすいように改良が加えられています。改良とは違いますが、オリジナルには付いていないハイパスフィルターが付いています。

気になるのはレゾナンス(ENPHASIS)を上げていくと低音が混ざって聴こえるところ。上げなければハイパスになってるんですが設計ミスですかねこれ?






試奏テスト 

私がシンセをお店で試奏する時にはいくつかのテストをします。そしてテストをすることでこのシンセはどういった場面で使えるのか?あるいは私には必要ないシンセ。という見極めをするのですが、そのテスト方法を紹介しながらBehringer MODEL Dを紹介したいと思います。

っとその前に・・・私は毎日曲を作っているのため”曲を作るときに使い物になるのかどうか?”という見方でシンセを選んでいます。紹介する3つの試奏テストはその見極めを基準にしています。




1)Kickを作る

その昔、始めてライブをしたときに「Kickの音すごく良いですね」という話になりまして、当時はMophoでKickの音を作っていたのですがKickの作り方を説明・・・いや熱弁しましたら「Kick先輩」と呼ばれるようになったという。今でも思い出す笑い話です。

話を戻して。
シンセでKickの音を作ると何がわかるかと言いますと、ADSR(エンベロープ)の速さやレゾナンス(EMPHASIS)の強さ、低音がどれくらい出るのかがわかります。
ここで最も重要なのがADSR(エンベロープ)の速さで、理想的なKickが作れるシンセを見つけると私は100%購入を検討します。あとはサイズがデカすぎるとか値段が高すぎるのであきらめるって話です。

ADSR(エンベロープ)の速さがどれくらい重要なのかを簡単に説明しますと、アタックの早いシンセというのはアタックを遅くすることが出来ますが、アタックの遅いシンセはそもそもアタックを早くすることが出来ないという違いがあるわけです。

もはやこれだけで決定的な違いです。


Kick奥深し。


もちろんこれは私のようにシンセ1台でリズムキットを作るような人の考え方であって、そのような音作りをしない人にとっては重要なことにはならないかもしれません。

去年ARP Odysseyを手に入れたのですが、こいつはここで言うところの理想的なKickが作れないシンセです。ただし、モジュレーション操作が特徴的だったりデュオフォニックという他には無い魅力があるので手に入れました。

あくまでもシンセでKickが作れるというのは購入するときの基準になるということです。ただし、ちゃんとしたKickが作れるシンセってけっこう少ないです。



作り方は簡単。

※お店などでKickを作るときは音量に注意!最初はマスターボリュームを絞ってから始めましょう。下手するとスピーカーが吹っ飛びます。

最初にオシレーターを全てOFFにして音が出ないようにします。


フィルター(ローパス)は完全にカットオフ、レゾナンス(ENPHASIS)は最大に持ち上げます。そしてフィルターモジュレーションのアサイン(AMOUNT OF CONTOUR)はこれくらいにします。一般的にはEG(Envelope Generator)と表示される部分です。


次にフィルターとアンプのモジュレーションですが、両方ともアタック(ATTACK)とサスティン(SUSTAIN)は0にしてディケイ(DECAY)は短めにします。
このとき、フィルターのモジュレーション(写真上の列)よりもアンプのモジュレーション(写真下の列)のディケイ(DECAY)を少し長くするといい感じの低音が出ます。

写真左上のKEYBOARD CONTROLですが、両方ともONにするとレゾンナンスの発信音で音階が出ます。鍵盤を抑える位置でKickのピッチが変わりますのでベストな位置を探してみてください。

最後にノイズでBehringer MODEL Dの場合は無くてもKickを作れるのですが、足すことでKickのボトムが強くなります。ホワイトノイズとピンクノイズがありますが好みで選ぶといいです。

アナログシンセの特徴になるのですが、オシレーターをOFFにしても内部でノイズが出ているためレゾナンス(ENPHASIS)を最大に上げると発信音が出ます。反対にACCESS TI2などデジタルシンセは内部ノイズがないためそのままでは発信音は出ず、ノイズを足さないとKickを作ることが出来ません。



この動画はBehringer MODEL D(0:00~1:28)MIDIMINI(1:40~)でKickを作っている動画です。Behringerと比べてMIDIMINIのほうが”パツ”という音が出やすいのがわかります。


続いてこちらはKORG RADIAS、ACCESS TI2、ANDOROMEDA A6で順番にKickを作っているところです。

RADIAS(0:00~2:00)はそれなりに低音が出るのですが、Kickとしては物足りない音です。次のACCESS TI2(2:06~3:44)は”パツ”というアタックが綺麗に出ます。そして低音も綺麗に出ますが、デジタルでここまで出せるシンセは少ないです。最後にANDROMEDA A6(3:46~5:55)ですがエンベロープが特殊なのでMIDI MINIBehringer MODEL Dと比べるとKickのリリースを伸ばせるのが特徴です。


キック先輩のキック製造マシンランキングは・・・

1:ANDROMEDA A6
2:Behringer MODEL D
3:MIDI MINI
4:ACCESS TI2

てな感じです


実際に制作でKickを作るときの方法をUPしました。


Trance系の曲で使うKickはこの方法で作っているのですが、今までMIDIMINIだと若干歪みが加わったKickになるので気になっていまして、Behringer MODEL Dだとそれがなくなるので非常にいい音になります。おかげさまで今まで作ってきたキックライブラリを作り直すことになりました。







2)超低音を聴く

つまりシンセで振動に近い低音を出すのですが、このテストをすることでシンセの低音に対する考え方を知ることが出来ます。

私の経験ではこのときに音の変化が大きい、あるいは音痩せするシンセはミックスで埋もれやすくてインパクトの薄いシンセな場合が多いです。

やり方は簡単で、オシレーター1をノコギリ波(SAW)にして思いっきり低い音を出すだけです。


まずは4つのシンセで超低音を聴き比べます。





あきらかにRADIASは高域が削れています。
Accees TI2はアナログに負けていません。



アナライザと波形を見ていきます。

MIDI MINI


Behringer MODEL D


KORG RADIAS

ACCESS TI2

RADIASは予想どおり角が丸くなっています。TI2は波形が逆になっているのですがこういうシンセってけっこうあります。

で、次に3オクターブ上げて波形を切り取ったのですが、ここまでピッチを上げるとちゃんとノコギリ波(SAW)に見えます。そして、RADIASの波形も尖ってきます。

MIDI MINI

Behringer MODEL D

RADIAS

TI2


この4つをスペクトラムアナライザーで見てみます。
左からMIDI MINI、Behringer MODEL D、RADIAS、TI2


このようにして見るとアナログシンセだと全体的にノイズが多かったり波打っていたりしてデジタル音源と違うということが判るかと思います。






3)シンセベースを作る

シンセベースも慣れてくるとすぐに作れるようになります。作るときのポイントは2つだけです。


オシレーター1をノコギリ波(SAW)にして1オクターブ下のオシレーター2を重ねます。

 あとはアンプのエンベロープでSUSTAINを最大にしてDECAYを短めにします。この状態でフィルターをカットしながらフィルターエンベロープへのアサイン(AMOUNT OF CONTOUR)を上げていきます。基本的にATTACKは0のままで、フィルターに作用するDECAYとSUSTAINとAMOUNT OF CONTOURを操作してベースを仕上げていくことになります。


動画作りました。

MIDI MINI - (0:00~1:20)
Behringer - (1:22~2:10)
RADIAS - (2:14~3:40)
TI 2   - (3:42~)

MIDI MINIBehringer MODEL Dはアタックのシッカリしたベースになります。TI 2もいい感じなんですがアナログシンセにある荒っぽい感じは出ません。あとRADIASですが、上で紹介した超低音のクオリティが悪いため低域になるほど音程感がなくなります。超低音が綺麗に出ていないとこういった場面で差が生まれます。






 ミックスと比較 

適当にループを作ってミックスで比較してみます。


実際に触って見るとわかるのですが、MIDIMINIのエンベロープは動きが早いのでタイトなベースが作りやすいです。これはKickを作った時にアタックの違いが出ていましたのでここでも同じように違いが出ています。

コアな感想ですがMIDIMINIのリリースカーブのほうが美しいです。


とりあえず音は似ています。違いが出るのはMIDI MINIのビンテージだから生まれる歪み(オーバードライブみたいなの)やエンベローブカーブです。ビンテージだからエンベロープカーブに違いが出るのかはわかりませんが、とにかくこれくらいだと同じって言えませんが似てるって言えます。

(追記)詳しい方に確認したところ、年数、劣化によってエンベロープが変化することはあるそうです。






 ベリモーグまとめ 

たぶん私のMIDI MINIは製造されてから20年以上たっています。そのため鍵盤で音階を抑えると微妙にピッチがズレるのですが、これはこれで個性的でビンテージシンセの魅力だと思っています。冬場は特に不安定になるので室温を上げて、制作のときはけっこう長く電源を入れっぱなしにしています。
Behringer MODEL Dは新しいだけあってピッチが安定しているので電源を入れてから少し待てば大丈夫です。鍵盤の音階ピッチも安定していますよ。ただし、オシレーターごとのチューニングがずれていますが(笑)。この辺りはベリンガーらしさがあって安心しました。

チューニングもそうですが、MIDI MINIBehringer MODEL Dと比べてノイズや歪みが多いためビンテージ(古臭い、不安定感)な雰囲気が出ます。こればかりは製造が古いか新しいかの違いになると思います。Behringer MODEL Dも20年以上たつとこうなるんでしょうか?


将来壊れた時はどうなるのかなっと?Behringer MODEL Dは一枚基盤なので本社に修理で送ったら新品になって帰ってくるのでしょう(笑)







実際に制作で使い分けるなら・・・

こういった音程感(メロディ)がある曲であればBehringer MODEL D


音程感(メロディ)がない曲であればMIDI MINI


不安定感を出したいならMIDI MINI


上で紹介した曲はどれもMIDI MINIのシンセベースを取り入れていますが、Behringer MODEL Dも加わったことで使い分ける場面が増えそうです。
ただし、シンセベースで考えるとMIDI MINIのほうが優秀(音が好み)なので使う機会が多いと思います。Behringer MODEL Dはどちらかというとベースではないリードやシンセアルペジオ、効果音系で使う機会が増えそうです。



ずいぶん昔から「下手なシンセ集めるよりMoogを手に入れろ」みたいなことを言ってMoogを評価していましたが、「下手なシンセ集めるよりBehringer MODEL Dを手に入れろ」といういい方に変わりそうです。